農業共済新聞で里山牛が掲載されました

農業共済新聞で里山牛が掲載されました

肉用牛放牧で成果 耕作放棄地を持続可能な資源に【11月3週号 鹿児島県】

志布志市志布志町で野菜や飼料作物の生産・販売を手掛ける株式会社さかうえ(坂上隆〈さかうえ・たかし〉代表=53歳)では、耕作放棄地などを活用した放牧による黒毛和牛の生産を2019年に始めた。坂上代表は「農地としての利用が困難な場所で牛を飼うことで、里山が元気になれば」と意気込む。同社では、受け手のいない農地を借り受け、ピーマンやキャベツ、飼料作物など(約200ヘクタール)を生産する。「中山間地域という不利な農地では、作業効率の悪さや鳥獣被害が課題となっていた」と坂上代表。新たな活用手段として、放牧による肉用牛の生産に取り組んだ。点在する12ヘクタールの農地に、簡易の牧柵や飼槽などを整備。現在は繁殖と肥育の計156頭を飼育し、生育ステージに応じて区画を順次移動していく。餌には自生する草や自社で栽培した飼料を使用し、地域資源の有効活用につなげた。排せつ物は有機肥料として還元させることで、農地としての機能が回復するとともに、農作物の栽培が見込める状態になるという。同社生産部の世良田圭祐〈せらだ・けいすけ〉部長(39)は「牛は自然に近い環境の中でストレスなく歩き回れ、疾病の発生が少ない。草を食べることで地域の景観が保たれ、野生動物が近寄りにくくなった」と話す。6カ月以上飼養した牛は「里山牛」として出荷。坂上代表は「草由来の香りや適度な脂身と赤身のうま味が特徴」とPRする。自社ホームページをはじめ、ふるさと納税返礼品など独自の販売ルートを展開。健康に関心の高い消費者から人気を集めている。今後について「採算が合う仕組みを構築していくことが、持続可能な資源として里山を守り、生かしていくことにつながる。農業を通して地域の課題解決に積極的に取り組んでいきたい」と先を見据える。